鬼才とはまさしくこういう人のことを言うのだろう。彼は基本的には一人で全て楽器をこなすマルチプレイヤーである。それに加えて、活動を始めた2008年から今年2017年まで毎年欠かすことなくアルバムを発売し、来年2018年もすでにアルバムのリリースが決まっている。それにカセットテープ、7インチなども合わせたらすごい数だ。Ty Segallのソロ名義だけでなくFuzzなどのバンドのメンバーとしても活動している。
彼がすごいのは数だけではない。
ガレージロックの荒々しさ、ファズをかけたボーカルのサイケデリックなサウンド、70年代のグラムロック、サイケデリックフォークに影響を受けた渋さが良い配分で織り交ぜられており、彼にしかできない歌い方からソングライティング、インパクトのあるアルバムジャケット、その世界観全てがアメリカのローワァイシーンの中でも格別だ。
さて、2017年を振り返ってインディーロックの同じように聞こえるバンドが多く、個性が消えてしまったと感じた。
例えば、2000年代のガレージロックリバイバルもたくさんのアーティストがいたが、1つのムーブメントの中でも皆ひとつひとつ個性が光り、どれを聴いてもこのアーティストでなければいけないと思わされ、聞く価値を見出せる。最近のインディーロックバンドでは、その"このバンドだからこそ"というものが少し欠けているように思う。
ストリーミング配信で色々な音楽に触れられるからこそ、SNSの普及で雑誌のプッシュなどに関係なく一個人の意見で聞いてみようと思えるからこそ、逆に、そのアーティストでなければできない音を聴きたいと思ってしまう。
Ty SegallはTy Segallでしかできない音、Ty Segallらしさを確立し、聴く人を惹きつける。
個性がなくなってしまったバンドが多かったと言った2017年のアルバムでも彼はちゃんと彼でなくてはできないアルバムで、かつ完成度の高いものだった。
アメリカのローファイシーンの波に乗り、彼の唯一無二性を見せつけ、精力的に活動するTy Segall。ぜひリアルタイムで体感して欲しい。
◾️オススメアルバム◾️
1. Ty Segall (2017)
ガレージロックとサイケデリックフォークの融合。そしてひとつひとつがダイナミックでかっこいい曲。ギターの凝ったサウンドから乾いたドラム音。プロデューサーはいなくTyが全てセルフでやる場合が多いが今作は、スティーブアルビニ。最高。
2. Melted (2010)
インパクトのあるこのジャケットはTy自身がモンスターになったとしたらと言うコンセプト。ゆるいガレージ感が増したこのアルバムで、サウンドを確立したと言っても良い。
短い曲ばかりでかなり聞きやすい。
3. Lemons (2009)
一曲目のIt #1はサンローランのランウェイでも使われている。ファズ効きまくりの音にお洒落さが加わった一枚。
Ty Rexというレコードストアデイで発売されてきたT.Rexのカバーを集めたアルバムもあり、選曲からその変貌までかなり面白いので気になる人はそちらも。
涅槃
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